
株式には「上場株式」と「非上場株式」の2種類があります。
一般的に株式と聞くと、証券会社を通じて売買する上場株式をイメージされる方が多いでしょう。
しかし、相続や贈与などで取得する株式の中には非上場株式もあります。
非上場株式は上場株式とは大きく性質が異なり流通する市場が存在しないので、特に売却方法や売買価格の決め方に違いがあります。
その違いを理解していないと、「売りたいのに売ることができない」「相続したがどう扱えばよいかわからない」といった問題に直面するケースも少なくありません。
この記事では、非上場株式と上場株式の違いについて、初心者の方にもわかりやすく解説します。
上場株式と非上場株式の違い
最も大きな違いは、証券取引所で自由に売買できるかどうかです。
| 項目 | 上場株式 | 非上場株式 |
|---|---|---|
| 売買の場所 | 証券取引所 | 市場が存在しないため個人や法人間での個別取引 |
| 売買価格の決め方 | 市場価格 | 売り手と買い手の協議によって決定 |
| 買い手 | 売り注文を出せば、原則自動でマッチング | 自分で買い手探しが必要 |
| 換金性 | 約3日後には現金化 | 買い手が見つからなければ換金不可 |
| 情報開示 | 情報開示義務があるため、詳細情報の入手が容易 | 発行会社の協力が得られない場合、必要最小限の情報しか入手不可 |
| 運用性 | 値上がり益や配当金の受領が期待可能 | 配当の有無は、オーナーや経営者陣の意向で大幅に左右 会社が業績を伸ばしていても、買い手が見つからない場合は、値上がり益の受領不可 |
| 売却までの期間 | 条件が合えば、即日売却可能 | 買い手を探す必要があり即日売却は不可 ※数カ月~数年単位でかかる可能性もあり |
| 譲渡制限 | 原則なし | 多くの場合、譲渡制限あり ※但し、譲渡制限がついていても売買は自由 |
| 売却手続き | 証券会社での売却手続きで完結 | 譲渡制限がある場合の手続きや契約書作成等、所定の手続きが必要 |
| 相続時の取扱い | 市場価格より相続税評価を算定 ※換金性が高く、納税資金を準備しやすい | 発行会社の規模や財務状況を鑑みた算定が必要 ※換金性が低く、相続税が高額な場合、支払いが困難となるケースがある |
上場株式は証券取引所に上場しているため、市場で常に売買が行われています。
一方で非上場株式は市場が存在しないため、買い手を見つけることができなければ売却することが叶いません。
上場株式とは
上場株式とは、東京証券取引所などの証券取引所へ上場している会社の株式です。
証券会社の口座があれば誰でも売買でき、市場の需要と供給によって価格が形成されるため、必要なタイミングで現金化しやすい特徴があります。
日本には数千社の上場会社があり、株式は毎営業日、多くの投資家によって売買されています。
会社は上場することで資金調達がしやすくなるほか、社会的な信用度の向上や知名度アップといったメリットもあります。
一方で、上場会社は厳しい審査基準を満たし、上場後も継続的に情報開示やコーポレートガバナンスに関するルールを遵守しなければなりません。
上場株式の特徴
上場株式には、非上場株式にはないさまざまな特徴があります。
市場で自由に売買することができる
上場株式は、東京証券取引所などの証券取引所を通じて売買されます。
証券会社に口座を開設すれば、個人・法人を問わず多くの投資家が売買できるため、買い手や売り手を個別に探す必要はありません。
例えば、「株式を今日売却したい」と思った場合でも、市場で同額で買い注文を出している投資家がいれば、その場で売買が成立します。
買い手を探したり価格交渉をしたりする必要がないため、非常に利便性が高い仕組みとなっています。
また、インターネット証券の普及により、自宅からスマートフォンやパソコンで簡単に取引できることも、上場株式ならではの特徴です。
株価がリアルタイムで変動する
上場株式の売買価格は、市場での需要と供給によって常に変動しています。
会社の業績や経済情勢、金利、為替、国内外のニュースなどさまざまな要因が株価に影響を与え、市場が開いている時間帯はリアルタイムで価格が更新されます。
例えば、会社が好決算を発表すれば買い注文が増えて株価が上昇することがあります。
一方で、業績悪化や世界的な経済不安などが発生すれば売り注文が増え、株価が下落することもあります。
このように株価は常に変動しているため、保有する株式の価値も日々変化する点が上場株式の特徴です。
換金性(流動性)が高い
上場株式は市場参加者が多いため、売却したいタイミングで比較的スムーズに現金化することが可能です。
人気のある銘柄ほど売買が活発で、指値指定等の機能を活用すれば、希望する価格に近い金額で取引できる可能性が高い点も特徴です。
例えば、急に資金が必要になった場合でも、取引時間中であれば株式を売却し、数営業日後には現金として受け取ることができます。
これは、市場に常に多くの買い手と売り手が存在するためです。
このような「売りたいときに売却できる」という換金性が高い性質を流動性といい、上場株式は流動性が非常に高い金融商品とされています。
情報開示義務があるため、経営の透明性が高い
上場会社には、決算情報や有価証券報告書、適時開示情報などを公表する義務があります。
そのため、投資家は会社の業績や財務状況、経営方針などを確認したうえで投資判断を行うことができます。
例えば、売上高や利益、事業内容、今後の経営戦略などは定期的に公表されており、誰でも確認することが可能です。
また、業績予想の修正や大型契約の締結、M&Aなど、株価に大きな影響を与える重要な情報についても速やかに開示がなされます。
情報の透明性が高いことは、投資家が安心して取引できる理由の一つです。
株価変動リスクがある
上場株式は流動性が高い一方で、市場環境や会社業績の変化によって株価が大きく変動することがあります。
短期間で価格が上昇することもあれば、大きく下落することもあるため、価格変動リスクを理解したうえで保有することが重要です。
例えば、不祥事や自然災害、世界的な景気後退、金利の上昇など、会社の業績以外の要因でも株価が下落することがあります。
また、市場全体が急落する局面では、業績が良い会社であってもつられて株価が下がってしまうというケースも珍しくありません。
上場株式は換金しやすい反面、市場の影響を受けて変動しやすいという特徴も理解しておく必要があります。
非上場株式とは
非上場株式とは、証券取引所へ上場していない会社の株式です。
日本企業の大多数は非上場会社であり、創業者や経営者一族、役員、従業員などが株式を保有しているケースが多くあります。
また、相続によって突然非上場株式を取得するケースも珍しくありません。
上場株式とは異なり、非上場株式は株式市場がないため、証券会社を通じての自由な株式売買はできません。
そのため、「株券は持っているが売却方法がわからない」「相続したものの株価がわからない」といった相談も多く見られます。
また、非上場株式には一般的な中小企業の株式だけでなく、将来上場を目指すベンチャー企業やスタートアップ企業の株式も含まれます。
会社によって事業内容や経営状況が大きく異なるため、株式の価値や売却方法もケースごとに異なる点が特徴です。
非上場株式の特徴
非上場株式には、上場株式とは異なる特徴があります。
特に「売買価格」「売却方法」「情報開示性」の3つは特に大きな相違点といえるでしょう。
市場価格が存在しない
非上場株式には株式市場がないため、毎日変動する株価がありません。
そのため売買価格は会社の業績や資産状況などをもとに個別に評価されます。
上場株式であれば証券取引所で現在の株価をすぐに確認することができますが、非上場株式には市場価格という概念がありません。
そのため、「この株はいくらなのか」という問いに対して明確な答えがないことが多く、会社の純資産や利益水準、将来性、配当実績などを総合的に考慮して評価額が算出されます。
また、相続税評価額と、実際に売買される価格は必ずしも一致しないケースが多く、評価方法によって価格に差が生じるため、売却を検討する際には注意が必要です。
買い手が株主になれない可能性もある
非上場会社の多くは「譲渡制限株式」を採用しています。
譲渡制限株式とは、第三者が株主となるためには、会社の承認が必要となる株式です。
そのため、売り手と買い手の当事者間での売買は自由ですが、買い手が株主になれるか否かは会社の決定に委ねられています。
譲渡制限制度は、会社が望まない第三者が株主になることを防ぎ、経営権の安定を維持することを目的として活用されています。
そのため、買い手が株主になるためには、会社の取締役会や株主総会などの承認を受ける必要があります。
ただし、買い手が株主となることについて会社の承認が得られない場合は、会社や指定買取人に買取を請求する手続きが用意されています。
情報開示性が低い
上場会社は決算情報や有価証券報告書など、多くの情報を公開しています。
一方で非上場会社は情報開示義務が限定されるため、外部から企業価値を把握しにくいという特徴があります。
例えば、売上高や利益、財務状況などの詳細な情報が一般には公開されていない会社も多く、株式の価値を判断するための情報が不足していることがあります。
そのため、株式を購入したい人にとっても企業価値を判断しにくく、売買が成立しにくい要因の一つとなっています。
また、会社の経営状況を確認するには、会社から財務資料の提供を受けたり、株主として資料の閲覧請求を行ったりする必要がある場合もあります。
こうした情報収集の手間も、非上場株式の売却や評価が難しい理由の一つです。
流動性が低く、現金化に時間がかかる
非上場株式は、上場株式のように市場で常に売買されているわけではありません。
そのため、売却したいタイミングですぐに買い手が見つかるとは限らず、現金化までに時間がかかることがあります。
特に少数株式の場合は、買い手が限られることも多く、会社や既存株主との協議が必要になるケースもあります。
相続や贈与で取得した株式を売却したい場合は、非上場株式買取専門の会社や専門家へ相談することで、スムーズに売却できる可能性があります。
非上場株式と上場株式のメリット・デメリット
上場株式
メリット
- 値上がり益や配当等を享受できる
- 株価が明確で売買が簡単
- 少額から投資可能
- 情報開示の範囲が広く、経営の透明性が高い
- 相続が発生しても、納税資金の準備がしやすい
デメリット
- 株価変動が大きくなる可能性が高い
- 景気や相場の影響を受けやすい
非上場株式
メリット
- 市場の株価変動に株式価値が左右されにくい
デメリット
- 配当が少ないもしくは無配の場合が多く、リターンを得づらい
- 市場がなく買い手を探す必要があり、売却が難しい
- きまった価格がなく、評価が難しい
- 譲渡後の手続きが複雑になる可能性がある
- 情報開示が限定的で、資料請求手続等が必要となるケースがある
- 換金性が低く、相続税が高額な場合支払いが困難となるケースがある
非上場株式はなぜ売却が難しいのか
非上場株式が売却しにくい理由は、大きく3つあります。
買い手が見つかりにくい
株式市場が存在しないため、自分で買い手を探す必要があります。
譲渡制限がある
買い手が株主となるには、会社の承認が必要となり、承認されなければ買い手は株主となることができません。
売買価格の協議が必要
市場価格が存在しないため、
- 純資産
- 収益力
- 将来性
- 配当状況
などを総合的に判断して価格を決定します。
そのため、買い手との価格協議が必要となるケースがほとんどです。
非上場株式は売却できる?
結論からお伝えすると、非上場株式も売却は可能です。
ただし、上場株式のように証券会社で簡単に売却することはできません。
代表的な売却方法は次のとおりです。
- 発行会社へ売却する
- 他の株主へ譲渡する
- 親族へ譲渡する
- 非上場株式買取専門の会社へ売却する
保有株式の内容や譲渡制限の有無によって最適な方法は異なります。
専門家へ相談した方がスムーズに進むケースも多くあります。
まとめ
非上場株式と上場株式の最大の違いは、「市場で自由に売買できるかどうか」です。
上場株式は換金性が高く価格も明確ですが、非上場株式は市場がないため売却には専門的な知識や手続きが必要になります。
特に相続や贈与で取得した非上場株式などは、「売れない」と思われてしまいがちですが、実際には売却できるケースも多くあります。
売却を検討している場合は、自分に合った方法を選択することが大切です。
専門家へ相談することで、よりスムーズな売却につながる可能性があります。
