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ミニマムタックスとは?(概要)
ミニマムタックスとは、日本の所得税制度において高い所得を得ている個人に対して、最低限の税負担を確保するための追加課税制度のことです。
正式名称は「特定の基準所得金額の課税の特例(極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置)」といいます。
この制度は2025年(令和7年)分の所得税から適用される新制度で、主に所得が非常に大きく、金融所得(株式譲渡益や配当など)の割合が高い人が対象となります。
・所得合計が非常に高い(後述の条件)場合に追加の所得税が課される。
・主に株式売却などの金融所得による高所得者が対象。
・もともとの税額が一定水準(実効税率22.5%)未満だった場合、その差額が追加課税される仕組み。
引用:極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(租税特別措置法第41条の19に規定する「特定の基準所得金額の課税の特例」)の適用が見込まれる場合の所得税及び復興特別所得税の予定納税額の減額申請について
(https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/gengaku/gengaku.htm)
令和5年度税制改正(※1において、税負担の公平性を確保する観点から、おおむね平均的な水準として30億円を超える高い所得を対象として、極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(租税特別措置法第41条の19に規定する「特定の基準所得金額の課税の特例」)が導入されました。
具体的には、個人でその者のその年分の基準所得金額(※2)が3億3,000万円を超えるものについては、その超える部分の金額の100分の22.5に相当する金額からその年分の基準所得税額(※3)を控除した金額に相当する所得税を課することとされました。
非上場株式の売却とミニマムタックスの関係
非上場株式を売却した場合の基本的な税
個人が非上場株式を売却して利益(譲渡所得)を得たとき、原則として次の税がかかります。
所得税:15%
住民税:5%
復興特別所得税(所得税の2.1%相当)
⇒合計で20.315%(分離課税)です。
国税庁公式ページ(個人向け)
税率の詳細:国税庁「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
この税率は通常の株式譲渡所得の税率です。
ミニマムタックスはこの税額が一定条件下では追加される仕組みです。
ミニマムタックスが発生する条件
ミニマムタックスが適用されるための主な条件は次のとおりです。
1.合計所得金額が基準値を超えること
税制改正では、その年の「基準所得金額」(合計所得金額を基に算出)が3億3,000万円を超える場合に対象となります。
※「基準所得金額」は株式譲渡益・給与所得・不動産譲渡所得など多くの所得を合算した額です(NISAや源泉分離課税の未申告所得など一部除外あり)。
2.通常の税額が所定の水準に満たない場合
基準所得金額を計算したうえで、通常の所得税額(分離課税・合算課税等の税額)と比較して、以下の金額が大きい場合に追加課税が発生します。
(基準所得金額-3億3,000万円)×22.5%>通常の所得税額
この計算で出た差額が追加で納めるべき税金(ミニマムタックス)です。
ミニマムタックス適用後の税負担がどう変わる?
税負担の考え方
通常の非上場株式譲渡税率:約20.315%
ミニマムタックスの基準税率:22.5%(所得税)+住民税5%=最大27.5%相当
通常の非上場株式譲渡税率
非上場株式を売却した場合、原則として約20.315%(所得税15%+住民税5%+復興特別所得税)がかかります。
ミニマムタックスの基準税率
所得が極めて高い場合は、「最低でも所得税22.5%は負担すべき」 という考え方が適用されます。
住民税5%は別途かかるため、実質的な税負担は最大で約27.5%相当になる可能性があります。
考え方の注意点としては、ミニマムタックスは税率を一律に27.5%へ引き上げる制度ではなく、通常の20.315%課税では不足すると判断された場合に、不足分だけを追加で課税して最低水準まで引き上げる仕組みです。
ミニマムタックスが導入された背景
現行税制では、
・給与所得等は累進税率(最大45%)
・株式譲渡や配当などは一律分離課税(約20%)
という違いがあります。
このため、所得が高くなるほど株式譲渡益等が主体になると実効税率が下がる現象、いわゆる「1億円の壁」が発生していました。
ミニマムタックスの導入目的は、超高額所得者が株式譲渡などで低い税率しか払わないケースを是正することです。
所得税の垂直的公平性(高所得者ほど税負担が重くなる原則)の回復という点にあります。
非上場株式の売却とミニマムタックス
| 項目 | 説明 |
| 譲渡所得の基本税率 | 約20.315%(所得税+住民税) |
| ミニマムタックスの対象 | 基準所得金額が3億3,000万円を超える個人 |
| ミニマムタックスの累積税率 | 実効税率約22.5%(所得税部分)+住民税 |
| 影響が出やすいケース | M&Aや事業承継による大規模株式売却など |
追加で押さえておくべき関連項目
1.NISAなど非課税制度の影響
NISA等の非課税口座で得た株式譲渡益は、「申告不要制度」によりミニマムタックスの計算上除外されるケースがあります(基準所得金額の計算に含めない)。
2.売却価格が時価より低い場合の税務上の注意
非上場株式を低価格で売却した場合、税務上時価を基準に譲渡所得を計算される可能性があり、思わぬ税負担が発生することもあります。
⇒詳細は国税庁の「一般株式等を譲渡したときの課税」等で確認してください。
まとめ
非上場株式の売却とミニマムタックスは、売却益そのものだけでなく所得全体の状況や税率の構造、基準所得金額が一定以上かどうかという点がとても重要になります。
ミニマムタックスは「超高額所得者に最低限の税負担を求める仕組み」であり、株式売却益が大きい場合やM&Aなど大規模譲渡がある場合には、事前に税額シミュレーションを行っておくと安心です。
国税庁「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置(ミニマムタックス)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/shinkoku/kiwataka/index.htm
国税庁「株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1463.htm
